不法行為について
不法行為
交通事故や請負して建築した建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合などに損害を被った被害者は不法行為責任に基づく損害賠償請求をすることができます。
不法行為による損害賠償請求が可能な範囲(人や金額)、期間など様々なルールがありので、それぞれ確認していきましょう!
不法行為のルール
不法行為を知った時
民法724条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう(最判平14.1.29)。
損害を知った時は不法行為による損害賠償請求ができる期間に影響するよ!
損害賠償債権の消滅時効
不法行為による損害賠償債権が消滅時効にかかるのは、損害および加害者を
知った時から3年ないし
不法行為の時から20年たった時である(民法724条)。これは損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権についても同様である。
不法行為または債務不履行による遅延損害の場合
損害賠償請求が可能な期間
- 不法行為を知った時から3年
- 不法行為の時から20年
悪いこと(不法行為)されてるのをを知ったら、3年以内に言わなくちゃ!
人の生命又は身体を害する不法行為
原則として、不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年行使しないときは、時効によって消滅する(民法724条)。しかし、例外的に
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を
知った時から5年間行使しないときは、
時効によって消滅する(民法724条の2)。
消滅時効の進行
不法行為の加害者が
海外に在住している間も民法第724条2号の20年の
時効期間は進行します。
個別的損害
各損害についての損害賠償請求権の
消滅時効は、個別的損害ごとに進行する(大連判昭15.12.14)。
不法占拠により日々発生する損害については、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行します。
第三者への損害賠償
建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対して、当然契約上の債務不履行責任に基づく損害賠償責任を負う(民法415条1項)。また、
契約関係にない建物の居住者に対しては、契約上の債務不履行責任はないものの、
不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあり得る(民法709条)。
アパートを建てた人とアパートを借りてる人は直接の契約関係じゃないけど、アパートの建築に問題があって被害が出たら責任取ってほしいよね。
第三者の損害賠償責任
債権も第三者から侵害されることがあり、そこから保護すべきであるから、
第三者が債務者を教唆し、
又は債務者と共同してその債務の全部又は一部の
履行を不能にさせた行為は、不法行為となる(判例)。この場合、行為者を教唆した者及び幇助した者も、
共同行為者とみなして、
同様の責任を負う(民法719条)。
名誉権
名誉を違法に侵害された者は、
損害賠償又は名誉回復のための処分(民法723条)
を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、
侵害行為の差し止めを求めることができる(判例)。
名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としても名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからです。
損益相殺
損益相殺とは、民法の条文にはないが、公平の理念により、
判例で認められている(536条2項ただし書参考)。判例によれば、
不法行為と同一の原因によって被害者又はその相続人が第三者に対して
損害と同質性を有する利益を内容とする権利を取得した場合は、当該債権が現実に履行されたとき、又はこれと同視しうる提訴によりその存続及び履行が
確実であるときに限り、これを加害者の賠償すべき
損害額から控除する(判例)。
あからさまに被害者に利益が出ないようにするためのルールみたいな感じですね!ただし、明確な損益相殺の基準はなくて、ケースバイケースのようです。
放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該
保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額をいわゆる
損益相殺として控除しなくてよい。
この場合、損益相殺が認められるかが問題となり、家屋焼失によって支払われた火災保険金は、被保険者である家屋所有者が既に払い込んだ保険証の対価なので、もともと不法行為の原因と関係なく支払われるものであることから、不法行為の損益相殺として控除しないとしています(判例)。
放火(不法行為)のせいで保険金(利益)が出てるように見えるけど、その保険金は被害者が保険金を払ってた対価だから、相殺しなくていんだね。
放火されて、損害賠償が控除されるなんておかしいよね
使用者と被用者
「被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべき」(判例)
ココでの使用者は雇い主、被用者は雇われた人をイメージしてね!
雇い主は雇った人の尻ぬぐいをしないといけないんだね!
信義則上相当な限度
民法715条により、
使用者は被用者に対して求償することが可能だが、これは
信義則上相当な限度に限られる(最判昭51.7.8)。
どちらか一方が無条件にすごく負担が重くなることは基本的にないんだね。
AがBから賃借する甲建物に、運送会社Cに雇用されているDが居眠り運転するトラックが突っ込んで甲建物の一部が損壊した場合(以下「本件事故」)。なお、DはCの業務として運転をしていたものとする。
Dさんがトラックで甲建物に突っ込みました
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Dに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合があります。
責任無能力者
「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負うものは、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。しかし、
当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者にあたらない」(判例)
責任能力がない認知症患者が線路内に立ち入り、列車に衝突して旅客鉄道事業者に損害を与えてた場合、当該責任無能力と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負いません。
交通事故
不法行為の問題で代表的なものが交通事故の例です。それぞれ過去問から具体例を見ていきましょう!
顧客を同乗
Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある)場合。
A:使用者
B:被用者(加害者)
C:被害者
D:加害者
共同の不法行為
数人が
共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、
各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法719条)。そのため誰かが全額を賠償した場合は、他の物に対し求償できることとなる。この場合Cに対し、BとDが共同で損害を加えており、Bの
使用者であるAも不法行為責任を負う(民法715条)。
Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができます。
この場合、AさんもBさんもDさんも連帯して損害賠償の責任を負うんだね
この事故で損害を受けたDさんがAさんとBさんに損害賠償を請求することもできるよ!
使用者責任と共同不法行為
この場合のCは、
Aに対して使用者責任(民法715条1項)を追及できるので、
損害賠償を請求できる。また、Cは、BとDの共同不法行為によって損害を受けたといえるため、
BとDは連帯して責任を負う(民法719条1項)こととなる。
したがって、本事故によって損害を受けたCは、AとBとDに対して損害賠償を請求することができます。
被用者への求償権
使用者が損害賠償をした場合、使用者は被用者に対して求償権を行使することができる(民法715条3項)。
Aは、Cに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者のBに対して求償権を行使することができます。
被用者の負担
使用者が、被用者の惹起した自動車事故により、第三者に対する損害賠償義務を履行したことに基づき損害を被った場合において、使用者は信義則上、その損害のうち
4分の1を限度として、被用者に対し、
賠償及び求償を請求しうるにすぎない(最判昭51.7.8)。
Aの使用者責任が認められてCに対して損害を賠償した場合には、AはBに対して求償することができるが、Bに資力があったとしても、AはCに対して賠償した損害額の全額を常にBから回収できる訳ではありません。
消滅時効
被用者の不法行為に基づく責任と民法715条に基づく使用者の責任とは、いわゆる不真正連帯債務の関係にあり(最判昭45.4.21)、不真正連帯債務では、
一方の債務が消滅時効にかかっても他方が当然に消滅するわけではない。
BのCに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、AのCに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではありません。
不真正連帯債務の特徴は、連帯債務と違い弁済以外の行為に関しては、他の債務者に影響がない相対効となることころです。
だから、被用者の債務が免除(消滅時効)となっても、使用者の債務については免除(消滅時効)とはならないよ!
即死の場合
即死の場合であっても、被害者に損害賠償請求権が発生しそれが相続される(大判大15.2.16)。
Cが即死であった場合でも、AはCの相続人に対し慰謝料についての損害賠償責任を負います。
即死だったら、精神的な損害が発生しないから損害賠償の責任を負わないなんてことはありません。
過失相殺
被害者本人が幼児である場合における民法第722条第2項にいう被害者側の過失とは、被害者本人である幼児と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいう(最判昭42.6.27)。
Cが幼児である場合には、被害者側に過失があるときは過失相殺が考慮され、AはCに発生した損害の全額を賠償しなくてよい場合があります。
自動車事故と土地
Aは、令和2年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した場合。
相殺
人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務を受動債権とする相殺はできない(民法509条2号)。もっとも、これは不法行為の被害者の保護が目的であるから、
不法行為に基づく損害賠償請求を自働債権とする相殺を行うことはできる。
同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を相当額で相殺することができます。
逆に加害者のAさんの方から相殺はできないってことだよ
建物の瑕疵
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない物だった場合。
請負人への損害賠償請求
ある人が故意または過失で損害を与えたとき、被害者は不法行為責任に基づき損害賠償を請求できる。
Bさんが配慮すべき義務を怠ってました
Bが建物としての基本的な安全が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できます。
損害賠償請求の期間
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を
知った時から3年間行使しないときは、
時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする(民法724条)。
CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気づいてから3年以内です。
ちなみに、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求ができる期間は、原則として買主が瑕疵の存在に気付いてから1年以内です。
この問題は紛らわしいけで、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合だから、知ってから3年以内なんだね!
最後に
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