契約について
各種契約
不動産において「契約」は欠かせません。契約にも様々な種類があり、同時履行などのルールもあります。
本記事では、特に以下の契約について過去問を基に具体例を見ていきたいと思います。
同時履行
同時履行の抗弁権
同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)とは、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるとする権利(抗弁権)(民法第533条)。
同時履行の抗弁権 – Wikipedia より引用
同時履行の抗弁権の主張
双務契約の当事者の一方は、
相手方がその債務の
履行を提供するまでは、自己の債務の
履行を拒むことができる(同時履行の抗弁権、民法533条本文)。
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という)について
Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていなことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。
代金支払債務と目的物引渡債務は同時履行の関係に立ちます。
この場合、Bさんは自己の債務の履行期が過ぎた場合であっても、同時履行の抗弁権を主張し、Aさんに対して代金の支払を拒むことができます。
同時履行の関係に立つ場合
それじゃあ、同時履行の関係に立つ場合を見ていこう!
契約解除
契約解除の場合、売主の
代金返還債務と買主の
目的物返還債務は同時履行の関係に立つ(民法546条、533条)。
マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、売主の代金返済債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立ちます。
契約解除の場合、代金返済債務と目的物返還債務は同時履行の関係に立ちます。
もし、マンションは返したのに、代金が返ってこなかったら困るよね
詐欺が絡む場合
売買契約等が取り消されたとき、当事者双方の
原状回復義務は、同時履行の関係となる。これは第三者の詐欺がある場合でも関係ありません。
AがBに甲土地を売却し、甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。
詐欺が理由の売買契約の取り消し
売買契約が取り消された場合、お互いの原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。
詐欺が理由でも、売買契約の取り消しの時は原状回復の義務は同時履行になるんだね!
不動産売買
不動産売買における売主の登記協力義務と買主の代金支払義務は
同時履行の関係にある(大判大7.8.14)。
マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払義務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情がない限り、同時履行の関係に立つ。
不動産売買において、登記協力義務と代金支払義務は同時履行の関係に立ちます。
自動車売買
売買契約においては、目的物引渡し債務と代金支払債務が同時履行の関係に立つ(民法533条)。
中古自動車の売買においても、自動車の引渡しと、代金支払債務は同時履行の関係に立ちます。媒介者の有無などは関係ありません。
同時履行の関係に立たない場合
敷金
民法622条の2第1項1号は、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に敷金を清算して返還する義務を負うと定めている。
敷金は物件の原状回復に使われたりするから引渡し後に物件の状態などを確認しないといけないからだね
マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返済債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たない。
敷金返済債務と明渡債務は同時履行の関係に立ちません。
贈与
贈与は一般的にイメージが湧きやすいと思いますが、現金や不動産、貴金属品などを無償で与えることです。
しかし、負担付贈与という、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与があります。
贈与の規定
贈与者は、贈与の目的である物又は権利を贈与の目的として特定したときの状態で引渡せばよい(民法551条1項)。
例えば、中古の物件を贈与する時に多少の傷みなどがあってもその時の状態で引渡せば良いという事です。
贈与者の責任を軽減する観点から定められてるんだって!
負担付贈与契約
Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、
①Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した場合と、
②Aを贈与者、Bを受贈者とする負担付贈与契約を締結した場合。なお、これらの契約は令和2年7月1日に締結され、担保責任に関する特約はないものとする。
①売買契約
②負担付贈与契約
担保責任
負担付贈与契約については、贈与者は、負担の限度において、
売主と同じ担保責任を負う(民法551条2項)。
②の契約については、Aは、その負担の限度において、売主と同じく担保責任を負います。
双務契約
売買契約は、双務契約である。また、
負担付贈与については、その性質に反しない限り、
双務契約に関する規定を準用する(民法533条)。
①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合がある。②の契約についても、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することがある。
①売買契約も②負担付贈与契約も双務契約として扱われるから、Aさんに解除権が発生することがあるよ!
手付と解除
買主が売主も手付を交付したときは、
買主はその手付を放棄し、
売主はその倍額を現実に提供して、
契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が
契約の履行に着手した後は、この限りでない(民法557条)。
契約の解除をする場合
契約の解除ができない場合
履行期の到来後、いつでも提供できるだけの用意をした上で、相手方に履行を催告した場合には、履行の着手にあたります(判例)。
①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供しても契約の解除をすることができない。
赤ラインのところが履行の着手になるから、Aさんは手付の倍額を出しても、契約の解除ができないんだね!
贈与の解除
書面によらない贈与は、各当事者が解除することができる。ただし、
履行の終わった部分についてはこの限りではない(民法550条ただし書)。
不動産の贈与の場合、引渡しか登記をすれば履行が終わったことにしています(判例)。
②の契約が書面によらずになされた場合、Aは、甲建物の引渡し及び所有権移転登記のどちらか片方が終わるまでは、書面によらないことを理由に契約の解除をすることができる。
甲建物が引渡しされるか、登記されると履行が終わったことになって、契約の解除はできないよ!
売買
売買のルール
他人物売買
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)
を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して
買主に移転する義務を負う(民法561条)。
他人物の売買契約でも、契約自体は有効という事です。
Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。
売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。
父親の自動車を売買
売主の義務
売主は、買主に対し、
登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う(民法560条)。
売買契約の不適合
代金の減額
売買契約の目的物に
契約内容との不適合がある場合には、買主は、その程度に応じて
代金の減額を請求することができる(民法563条1項)。
新築建物の重大な瑕疵
【判決文】売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において、当該瑕疵が構造上の安全性に関わるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど、社会通念上、建物自体が社会的な価値を有しないと評価すべきものであるときには、上記建物の
買主がこれに居住していたという利益については、当該買主からの工事施工者に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として
損害額から控除することはできないと解するのが相当である。
要するに、めちゃくちゃな欠陥のある(社会的な価値のない)住宅を建てた工事施工者は、もしそこに問題なく居住していた人が居たとしてしても、その居住してたという利益についても損害を賠償するいう事ですね!
工事施工者:欠陥住宅を立てました。
買主:それに気づかず、居住してました
欠陥が判明!
買主:「欠陥があるので建て替えてください」
工事施工者:「今まで居住していた分の利益は控除させてください」
裁判所:「それはダメです」
売買の目的物に建て替えざるを得ないような契約内容の不適合がある場合、これは売主の債務不履行にあたるから、買主は解除権(民法541条)を行使することができます。
この場合、買主は売買契約そのものを解除することができるよ!
売買契約の目的物である新築建物に建て替えざるを得ないような契約内容との不適合がある場合、買主は、工事施工者に対して損害賠償請求をすることができる。
使用貸借
使用貸借(しようたいしゃく)は、当事者の一方(借主)が無償である物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することを内容とする契約。日本の民法では典型契約の一種とされる(民放第593条)。
使用貸借 – Wikipedia より引用
使用貸借と賃貸借
AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、
①賃貸借契約を締結した場合と、
②使用貸借契約を締結した場合
①賃貸借契約契約
②使用貸借契約
諾成契約
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその
賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法601条)ので
諾成契約である。また
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について
無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって効力を生ずる(民法593条)のでこれも
諾成契約である。
AB間の契約は、①も②も諾成契約(だくせいけいやく)です。
賃料があるかないかの違いで①賃貸借契約も②使用貸借契約も諾成契約(口約束)なんだね!
借主の死亡
使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う(民法597条3項)。これに対し賃貸借にはこのような規定がなく、相続により権利義務を引き継ぎことになる。
Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了します。
賃料を払ってないから、そのまま貸主に帰ってくるんだね
担保責任
賃貸借契約は、当然担保責任を負う。
使用貸借は、貸主は「目的として特定した時の状態」で引渡す義務を負い(民法596条、551条)、
基本的には担保責任を負わないが、例外的に瑕疵について
悪意かつ相手方に伝えなかった場合などのケースでは、担保責任を負うこともある。
AはBに対して、甲建物の契約不適合について、①でも②でも担保責任を負うことがあります。
①賃貸借でも②使用貸借でも担保責任を負うことはあるよ!
必要費の負担
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条)。これに対し
使用貸借では、借主は、借用物の通常の必要費を負担する(民法595条)とされている。
Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
使用貸借は賃料がない分、必要費を負担しないといけないみたいだね!
最後に
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