契約について
各種契約
今回は、こちらの記事で紹介できなかった以下の契約について見ていきたいと思います!
請負契約
請負契約とは、請負人が仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬が支払われる形式の契約です。
請負人は、依頼された仕事を完成させる義務があり、完成していない状態であったり、依頼主の要求レベルを満たしていなかったりする場合は、報酬を請求することができません。
請負契約とは?義務や責任範囲、委任契約と違い、契約書の作成ポイント | あしたの人事オンライン (ashita-team.com) より引用
宅建の勉強では主にお家の建設を依頼することをイメージすればいいよ!
憧れのマイホームの建設を依頼して、全く違う家が完成したりしたら、代金を支払わなくてよかったりするんだね!
請負契約のルール
担保責任
請負人は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、
知りながら告げなかった事実については、その
責任を免れることができない(民法572条、559条)。
請負契約の解除
建物を目的とする請負であっても注文者は
契約の内容に適合しないことを理由に
解除することができる(民法559条、564条、541条)。
マイホームを注文して、全然違う家が完成したりしたら、契約自体を解除できるんだね!
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物が種類又は品質に関して
契約の内容に適合しない物だった場合
本件建物の契約不適合のために請負契約を締結した目的を達成することができなくとも、AはBとの契約を一方的に解除することができる。
注文した家と違うものが完成したら、契約を解除できます。
履行不能の限界
「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の
社会通念に照らして不能であるとき」は債務の
履行を請求できない(民法421条の2第1項)。
請負の目的物である建物の契約不適合があっても、その修補が契約及び社会通念に照らして不能であるときは、注文者は修補を請求することはできません。
常識的に修復不可能なことを要求することはできないんだね!
建て替え費用
請負の目的物に
契約不適合がある場合の損害賠償請求は民法559条、564条、415条1項により
することができる。損害賠償の範囲は「通常生ずべき損害」(同416条1項)であるが、目的物である
建物を建て替えざるを得ない場合には
建て替え費用は通常生ずべき損害であると認められる。
請負の目的物である建物に重大な契約不適合があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることができます。
すごいダメダメな建物を建てちゃったら、建て替えの請求をされちゃうんだね
損害賠償請求の期間
目的物に契約の内容の不適合があった場合における解除または損害賠償の
請求は「
不適合を知った時から1年」以内に行うこととしている(民法637条1項)。
請負の目的物である建物に契約の内容の不適合があるためにこれを建て替えざるを得ない場合、担保責任に基づく損害賠償請求は、請負人が当該不適合を知ったときから1年以内にしなければなりません。
引渡しの時期は関係ありません
注文者の帰責事由
契約の内容に適合しないものを引き渡した場合、請負人は担保責任を負う(民法562条)。ただしこの不適合が
注文者の帰責事由による場合は、例外的に
請負人は責任を負わない。
請負人が、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない請負契約の目的物を引き渡した場合において、不適合が注文者の責めに帰すべき事由によって生じた場合、注文者は報酬の支払いを拒むことができません。
不適合が注文者のせいだった場合はちゃんと報酬を払わないといけないんだね!
請負契約の過去問
Aを注文者、Bを請負人とする請負契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合
建て替えの損害賠償
注文者は、契約の目的物に
契約不適合があるとき、損害賠償請求をすることができる(民法559条、562条、564条)。そして、請負契約の目的物に契約不適合があるためこれを
建て替えざるを得ない場合には、注文者は、当該建物の建て替えに要する
費用相当額の損害賠償を請求することができる(判例)。
本件契約の目的物たる建物に契約不適合があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、AはBに対して当該建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができます。
契約不適合がある場合、必要な建て替え費用を請求できます
知ってから1年
請負契約の目的物に契約不適合が存在する場合に請負人の担保責任を問えるのは、その
不適合を知ったときから1年以内である(民法637条)。
Bの担保責任の存続期間は、Aが本件契約の目的物たる建物に契約に適合しない点があると知ってから1年です。
仕事完成までに契約解除
請負人が
仕事を完成しない場合は、注文者は、
いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる(民法641条)。
Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができます。
家が完成するまではそれまでにかかった費用を賠償すれば、いつでも契約を解除できるんだね!
注文者の失火
請負契約において、仕事(増築)が完成しない間に
注文者の責めに帰すべき事由で仕事の完成が不能となったときは、
請負人は残債務である未履行部分の仕事完成を免れる(判例)。
本件契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れます。
Aさんの失火のせいで増築できなくなりました。
Aさんの不注意で焼失しちゃったから、Bさんが責任を負う必要はないよね!
ちなみにこの場合、請負人Bは注文者Aに報酬全額を請求できます(民法536条2項)。
判例
中途終了(請負人のせい)
【判例】請負契約が
請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が
請負人に請求できるのは、注文者が残工事の費用に要した費用のうち、請負人の
未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。(最判昭60.5.17)
- 請負人が途中で工事をやめてしまいました。
- なので、注文者は他の業者に残りの部分の工事を依頼しました。
- 注文者は、残りの部分の工事にかかった費用を「請負人に賠償してほしい」と考えています。
注文者は請負人に対して施工済みの部分についてのみ報酬を支払えばよく、
残工事の報酬を支払う必要はありません(民法634条2号)。
注文者が損害賠償をできるのは実際に支払った額がもともと予定されていた債務を超えた場合です。
つまり、「残りの部分の工事代金は、元々は請負人に払う予定だったはずだから、それを超えた分だけが注文者の損害」となります。
損害賠償できる分
中途終了(注文者のせい)
【判例】請負契約が
注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の
債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない(最判昭52.2.22)。
さっきの中途終了の注文した側に責任があった版だね!
これも文だけだと分かりにくいから、具体的な状況を見てみよう!
<具体的状況>
- 注文者のなんらかの都合で、途中で工事を終了することになりました。
- 請負人は、残りの部分の工事を結果的に免れました。
- なので、用意していた資材が余りました。
- 請負人は、「注文者に報酬を請求したい」と考えています。
「注文者の責めに帰することができない事由」による仕事完成不能の場合に割合に応じた報酬の支払いを認めています(民法634条1号)。
この条文を反対解釈すると、注文者の責めに帰する事由があるときは請負人は請負代金債権の全額を請求できることとなります。ただし、この場合であっても、自己の債務を免れたことによる利益は償還しなければなりません。
つまり、「請負人としては期待を裏切られたところがあるから、本来もらえるはずだった報酬全額を得られるべき。だとしても、余った資材を他の工事で使って節約できた分は返すべき」という事です。
注文者のせいでも、節約できた分は返そう
委任・寄託
委任(いにん):当事者の一方(委任者)が一定の行為をすることを相手方(受任者)に委託すること。
寄託(きたく):当事者の一方(寄託者)がある物を保管することを相手方(受寄者)に委託すること。
委任・寄託のルール
善管注意義務
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務(
善管注意義務)を負う(民法644条)。
自己の財産と同一の注意を払うほど大切にはしなくてよいです。
報酬請求
受任者は委任が履行の中途で終了したとき受任者の
帰責事由の有無に関わらず、既にした
履行の割合に応じて報酬を請求することができる(民法648条3項2号)。
委任された場合は、受任者に責任があっても、既にした仕事の分は給料をもらえるよ!
ただし、
委託者に帰責事由がある場合は、受任者は
報酬全額を請求することができる(同法536条2項)。
依頼した側に責任があるときは、報酬全額をもらえるんだね!
このとき、受任者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを委任者に償還しなければならない。
もし、委任が途中で終了して受任者が得することがあったら、その分は委任者に返さないといけないんだね
死亡した場合
委任は、委任者又は受任者の
死亡によって終了する(民法653条1号)。
委任の場合、どちらか一方でも死亡したら、契約は終了です。相続人が出てくることはないです。
過去問
Aは、B所有の甲不動産の売却について、売買契約が締結されるに至った場合には売買代金の2%の報酬の支払いを受けるとして、Bから買主のあっせんの依頼を受けた。Aがあっせんした買主Cとの間で1,000万円の売買契約が成立したのでAがBに対して報酬として20万円の支払いを求める場合。この債権は契約に基づいて発生するものか。
20万の支払は準委任契約から発生してます
買主のあっせんは法律行為ではない事務の委託なので、これは民法656条の準委任契約です。よって、この債権は準委任契約から生じています。
その他契約
民法
民法537条1項
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する旨。
第三者から直接請求できることが民法で定められているんだね!
民法548条の2第1項
多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを
定型約款(ていけいやっかん)と定義する旨。
判決文の過去問
【判決文】契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の
説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、
不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の
債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。(中略)上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものである(略)。
簡単に言うと、契約に必要な説明をしなかったときには
不法行為として賠償責任を負うことはあるけど、債務の不履行として賠償責任を負うことはないってことだよ
説明義務違反と相殺
債務が
悪意による不法行為によって生じたときは、その債務者は、
相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条)。
買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結すべき情報を買主に提供しなかった売主(悪意ではない)に対する買主の損害賠償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができます。
損害賠償の請求権の期間
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者が損害及び加害者を
知った時から3年間行使しないとき、または、被害者が損害を被っていることを知らないときは、
不法行為時から20年経過した時点で時効によって消滅する(民法724条)。
不法行為による損害賠償請求が時効により消滅するとき
- 不法行為を知った時から3年
- 不法行為時から20年経過
最後に
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