抵当権②

宅建士

根抵当権/抵当権の順位/第三取得者

根抵当権

根抵当権とは?

根抵当権(ねていとうけん)」は、抵当権の中でもその設定を契約する際に「極度額」(上限金額)と「債権の範囲」を定めるものです。一度極度額と債権の範囲を設定すれば、その範囲内で何度でも借り入れと返済を繰り返すことができます。
このように何度も反復借り入れができることから、企業が事業資金などの融資を受ける際に使われることが多いので、一般消費者にとってはあまり馴染みのないものです。

 

根抵当権のルール

CがBとの間でAのBに対する債務を担保するためにC所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合

抵当権の設定

 

順位

抵当権の順位を譲渡することは可能だが(民法376条1項)、元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権の順位を譲渡することができない(同398条の11第1項)。

順位の譲渡ってなに?

抵当権を実行する時に優先される順位譲るって意味だよ!

 

根抵当権の行使

元本確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない(民法398条の7第1項)。

元本確定前だと順位の譲渡もできないし、根抵当権を行使することもできないんだね!

 

元本の確定前の根抵当権
順位の譲渡、根抵当権の実行ができない

 

減額請求

元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる(民法398条の21第1項)。

元本が確定した後なら、極度額を減額することができるんだね!

根抵当権は元本が確定してないと色々と不便だから、早く元本を確定させたいね

 

元本の確定

根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する(民法398条の19条第1項)。

一定期間(設定から三年)経てば、根抵当権設定者でも元本確定の請求ができるよ!

 

根抵当権の行使

根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる(民法398条の3)。

普通の抵当権は利息は満期となった最後の2年分についてのみ担保される(民法375条1項)だったね!

抵当権は利息は最後の2年分請求可能
根抵当権は利息は全部請求可能

 

 

抵当権の順位

順位の変更

抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる(民法374条1項)。

抵当権について登記がされた後でも順位の変更ができるよ

各抵当権者の合意ってことは、債務者の合意も必要ないね!

抵当権の順位の変更には譲渡放棄があります

抵当権の順位の譲渡

抵当権の順位の譲渡とは、抵当権者が他の債権者に対して、優先弁済を受ける権利を譲渡することをいう(民法376条1項)。

 

 

 

 

 

AがCの利益のために抵当権の順位を譲渡

先順位抵当権者と後順位抵当権者の間で、その順位を譲渡すると順位がいれかわるよ!

Bに不利益が出ない範囲で順位が入れ替わります

 

抵当権の順位の放棄

抵当権の順位を放棄すると、AとCの順位は同順位となります。そして、その配当の割合は債権額に応じての分配になります。

AがCのために抵当権の順位を放棄

AさんがCさんの為に抵当権の順位を放棄すると、もともともらえるはずだった分を債権額の割合で分け合うよ

AとCの債権額に応じて分配する

 

具体例

実際の過去問を基に具体例を見てみよう!

売却代金の配当

抵当不動産には、債権者Aが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Bが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Cが三番抵当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、その他に担保権を有しない債権者D(債権額2,000万円)がいる。抵当不動産の競売に基づく売却代金5,400万円を配当する場合。

抵当権の順位と債権額と配当額

問1:AがCの利益のために譲渡した場合

抵当権が譲渡されると、譲渡人の本来の配当額と譲渡された者の本来の配当額を合わせた額からまず譲渡された者が配当を受け、次に残額があれば譲渡人が配当を受けます
  • AとCの本来の配当額の合計はA|2,000万円+C|1,000万円=3,000万円
  • Cが3,000万円の弁済を受ける
  • Bが2,400万円の弁済を受ける
  • 残額はないので、Aの配当額は0円である

答1:Aは0円、Bは2,400万円、Cは3,000万円、Dは0円

 

問2:AがCの利益のために放棄した場合

抵当権の順位を放棄した場合、放棄した者と放棄された者が受け取ることのできる分配額の総額を、各人の債権額に応じて割り振ります
  • AとCの本来の配当額の合計はA|2,000万円+C|1,000万円=3,000万円
  • AとCの債権額の比はA|2,000万:C|4,000万円=1:2
  • 3,000万円をAとCで1:2で分配する
  • Aが1,000万円、Cが2,000万円受け取る
答2:Aは1,000万円、Bは2,400万円、Cは2,000万円、Dは0円

順位の譲渡でも順位の放棄でも、当事者以外の者(この問題ではBさん)には影響してないね!

 

抵当権の順位の譲渡でも放棄でも当事者以外の者の配当額は変わりません。

 

抵当不動産の第三取得者

最後に抵当不動産を第三者が取得した場合、どうなるか見てみよう!

代価を弁済

抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済した時は、抵当権は、その第三者のために消滅する(民法378条)。

請求された分をちゃんと支払えば、第三者は抵当不動産の抵当権を消せるんだね!

 

抵当権の消滅請求

抵当権の第三取得者は、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる(民法379条)。

第三取得者が主体的に抵当権の消滅を請求することもできるんだね!

BはB所有の甲土地にAから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。Aの抵当権設定後、Bが第三者であるCに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる

第三者は抵当権の消滅請求が可能

 

第三者取得者と法廷地上権

抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同一である場合には、その後建物が売却され抵当権実行時点において土地と建物の所有者が異なっていたとしても、抵当権実行により法廷地上権(民法388条)が成立し、建物所有者は土地を継続して利用することができる。

第三者が絡む場合も抵当権設定時にあった建物かどうかが重要だよ!

Bが土地に抵当権を設定した当時、土地上にB所有の建物があり、当該建物をBがCに売却した後、Aの抵当権が実行されてDが土地を競落した場合。

BはAからの貸付の担保のため、土地に抵当権を設定しました

B所有の建物をCに売却後、Aの抵当権が実行されDが土地を競落しました

この場合、DはCに対して土地の明渡しを求めることはできません

抵当権を設定した時には、Bさんが建物も土地も所有しているから法廷地上権が成立するよ

 

最後に

勉強したことは過去問アプリなどで復習しましょう!

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