抵当権
抵当権とは?
抵当権(ていとうけん)とは、金融機関が土地や建物などの不動産を担保にする権利のことです。
マイホーム購入時
例えば、マイホーム購入の為に住宅ローンを組むと銀行から家に抵当権を設定されるよ。
この抵当権は住宅ローンの返済が滞ったときのために、あらかじめ土地や建物を担保としておくものです。
ローン滞納時
もし、住宅ローンの返済が滞っても銀行は抵抗権を行使してローンの回収ができるよ。
このように目的物が売られたり、貸されたり、滅失したりして目的が果たせない場合(住宅ローンの滞納)に、代わりの価値のあるものが目的物(マイホームの売却)となることを物上代位(ぶつじょうだいい)と言います。
物上代位性があるものは、
抵当権・
根抵当権・
質権・
先取特権等があります。
抵当権について
抵当権のルール
消滅請求
主たる債務者、保証人及びこれらの物の承継者は、
抵当権消滅請求をすることが
できない(民法380条)。
抵当不動産について所有権を取得した第三者は抵当権消滅請求ができるよ
購入した不動産が抵当権の実行で回収されたら寂しいからね
賃借権
土地賃借人が当該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、その抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶ(最判昭40.5.4)。
賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及びます。
弁済期
抵当権の実行をする場合も、物上代位をする場合も、被担保債権の
弁済期が到来している必要がある。
弁済期:債務を履行すべき時期のこと
優先権
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その
優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる(民法389条)。
代位行使
第三者が抵当不動産を不法占有することにより
抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、
抵当権者は、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を
代位行使することができる(最判平11.11.24)。
抵当権の具体例
それじゃあ、過去問から抵当権に関する具体例を見ていこう!
火災による焼失
抵当権者は火災保険契約に基づく損害賠償金請求権に物上代位することができる(大判大12.4.7)。
Aさん所有の建物が火災によって焼失
Bの抵当権設定登記があるA所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Bは当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。
建物に抵当権が設定されているから、建物が焼失した時の損害保険金が代わりになるんだ!
物上代位をすることができるのは滅失した目的物に抵当権を設定した者である(民法304条)。
Aさん所有の建物が焼失、土地に抵当権あり
A所有の土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができない。
抵当権が設定されているのは土地、焼失したのは建物だから損害保険金の請求はできないよ。
賃料債権
抵当権が消滅するまでは、賃料債権に物上代位できる(最判平1.10.27)。
抵当権が設定されている建物を賃貸借している場合
Bの抵当権設定登記があるA所有の建物の賃料債権について、Bが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Bは当該賃料債権に物上代位することができる。
建物を売却するだけじゃなく、賃貸料があれば代わりになるんだね。
債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、
両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債権者への送達と
抵当権設定登記の先後によって決する(最判平10.3.26)。
先ほどの例で賃料債権を一般債務者が差押えした場合
Bの抵当権設定登記があるA所有の建物の賃料債権について、Aの一般債権者が差押えをした場合には、Bは当該賃料債権に物上代位することができる。
この場合、抵当権の登記が差押えより先に行われているから、Bさんの方が優先されるよ!
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、その賃借人が取得する
転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない(最決平12.4.14)。
抵当権設定建物を転貸借している場合
Bの抵当権設定登記があるA所有の建物について、CがAと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Bは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
AさんとBさんの関係(抵当権)をCさんのDさんの関係(転貸)に持ち込まれたら嫌だね。
連帯保証
銀行のAに対する貸付債権1500万円につき、BがAの委託を受けて全額について
連帯保証をし、C及びDは
物上保証人として自己の所有する不動産にそれぞれ
抵当権を設定していた場合
連帯保証人:「催告の抗弁」「検索の抗弁」「分別の利益」という通常保証人が持つ権利が認められない保証人のこと。連帯保証人の責任の範囲は債務者と同等で、通常の保証人より重い責任が課されます。
物上保証人:自分以外の人の債務を自分の財産(主に不動産など)から担保(保証)した人のこと。
保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する(民法499条、501条2項)。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する(民法501条3項4号)。
連帯保証人が全額保証
Aの連帯保証人であるBが債権全額について保証債務を履行しました
連帯保証人のBさんがAさんの代わりに銀行に1500万円支払ってくれたよ。
BはCとDに1000万円を限度に請求できます。
Bは、C及びDの各不動産に対する抵当権を実行して1000万円を限度に回収することができる。
各保証人(B・C・D)の負担部分は、1500万円を3人で割った500万円だよ。
Bさんはすでに500万円負担しているから、残りの1000万円を請求できるんだね!
銀行が抵当権で全額回収
銀行が抵当権を実行してCから債権全額を回収しました
銀行がCの不動産の抵当権を実行して債権全額を回収したよ
Bに対しては500万円請求可能
CはBに対して、500万円を限度として求償することができる。
みんな(3人)で1500万円を分けるから1人500万円負担するんだね
根抵当権
CがBとの間で、AのBに対する債務を担保するためにC所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合
CがAの為に抵当権および根抵当権を設定しました
抵当権や根抵当権の実行に際し、催告を請求できるような規定は存在しません。
Bが抵当権または根抵当権を実行する場合、どちらであってもCはまずAに催告はできないよ
抵当権は、設定行為で定めるところにより、
一定の範囲に属する不特定の債権を
極度額の限度において担保するためにも設定することができ(民法398条の2第1項)、この抵当権を特に
根抵当権と呼ぶ。
根抵当権でもあらゆる範囲の債権を担保できる訳じゃないよ
一定の範囲とは「金銭消費貸借取引、小切手債権、手形債権」などを定めることでその範囲内でさまざまな債権で不動産を担保にできます。
普通の抵当権は担保する債権が「住宅ローン」のように決まってるんだよね
対抗要件
不動産に関する物権の得喪は
登記によって決まる(民法177条)。
登記があれば、抵当権でも根抵当権でも設定した旨を第三者に対抗できるよ
抵当権と法廷地上権
法廷地上権とは
土地とその上の建物を同じ所有者が所有している場合に、競売等により土地と建物が別々の所有者に帰属することとなった際に、民法などの規定により建物のために地上権が自動的に発生することとされている。このように土地建物が強制的に分離処分される際に、法律の規定により建物のために発生する地上権を「法定地上権」と呼ぶ。
法定地上権とは|不動産用語を調べる【アットホーム】 (athome.co.jp) より引用
建物と土地の所有者がバラバラになると、いろいろと不都合になるから法廷地上権があるよ
法廷地上権の具体例
Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ、AがBから乙建物を買い取り、その後、Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法廷地上権について。
この問題は抵当権を設定した時に建物が存在していたかがポイントになるよ!
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地に抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について法定地上権が成立する(民法388条)。
Cの抵当権を土地に設定後、Aが建物の登記をした場合
甲建物によって法定地上権が成立します
土地と建物が「同一の所有者」に帰属するという要件につき、登記名義まで同一かどうかは問いません。
抵当権を設定した時にあった建物をAさんが所有しているね!
Cの抵当権を土地に設定後に、AがDに建物を譲渡した場合
甲建物によって法定地上権が成立します
土地と建物を所有する者が土地に抵当権を設定した後に建物を第三者に譲渡した場合にも、法定地上権は成立します。
土地に抵当権を設定した時にあった建物は土地とセットになってるイメージかな
甲土地を更地にした後、土地に抵当権を設定し、その後丙建物を甲土地上に建築した場合
丙建物によって法定地上権は成立しません
法定地上権が成立するためには建物は抵当権設定時に存在しなければならず、抵当権設定後に建てられた建物については、法廷地上権は成立しません。
この場合、土地に抵当権を設定した時に建物が存在してないね
土地に抵当権を設定後、甲建物を取り壊し、新たに丙建物を建築した場合
丙建物によって法定地上権は成立しません
土地とその土地上の建物に共同抵当権を設定した後、建物が取り壊され新たに建物が建築された場合、新建物のために法廷地上権は成立しません。
土地に抵当権が設定された時にあった建物かどうかが重要なんだね!
抵当権と不動産質権
質権(しちけん)とは?
債権を保全するために、債権者が債務者(または物上保証人)から物を受け取って
占有し、債務が弁済されなかったときにはその物を売却して、その売却価額から債権の弁済を受けることができるという担保物権のこと(民法342条)。
不動産に対して設定された質権を「不動産質権」というよ!
比較
・質権は、抵当権と同様約定担保物権の1つ
・抵当権は目的物を占有することはできないが、質権は目的物を占有できる
不動産を使用(占有)できるかどうかってのが一番の違いだね!
占有についてはこちら
対抗要件
不動産質権も抵当権も不動産に関する物権である。よって
登記が第三者対抗要件となる(民法177条)。
どちらも登記を備えなければ第三者に対抗することができません。
発生要件
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる(民法344条)。これに対し抵当権は合意によって発生する。
抵当権は目的物の引き渡しは効力の発生要件ではない。
不動産質権は目的物の引き渡しが効力の発生要件である。
存続期間
不動産質権は10年より長い存続期間を定めたときでも、その期間は
10年となる(民法360条)。一方抵当権にはこのような規定は存在しない。
利息
不動産質権者は利息を請求することができない(民法358条)一方で、抵当権では利息は満期となった
最後の2年分についてのみ担保される(民法375条1項)。
抵当権は利息の請求可能(最後の2年分のみ)。
不動産質権は利息の請求不可能。
融資の担保として不動産に質権を設定し、それを使用収益できたとしても、融資に利息をつけられないためメリットはなく、むしろ、物件の管理などに手間を要するデメリットがあります。
だらら、実際の不動産担保ローンにおいては、ほとんどのケースで、担保として用いられるのは抵当権であり、質権であることはまずないよ。
最後に
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